なんかふがふがくさいけど
いや何ですな、こんだけゲノム情報だの何だのが整備されたとか
いっても、わかってないことってのはかなーりあるもんでして。
大体人の嗅覚受容体遺伝子がいくつあるのか、正確な答えは誰も知らない。
嗅覚受容体遺伝子が何種類人間で発現しているか、つまり動作しているかに
ついての正確な答えは未だに存在しない。
嗅覚受容体の遺伝子は、Gタンパク質と呼ばれるタンパク質に結合する
性質を持っている。
嗅覚受容体が匂いの元となる物質の官能基と結合し、その後Gタンパク質が
活性化、このGタンパク質がアデニル酸サイクラーゼを活性化して環状AMP
(cAMP)をつくり、ナトリウムチャンネルが動作、脳へと活性電位が伝わる。
で、最近になってよーやっとわかってきたのだが、視覚の色の認識は
「赤」「青」「緑」の光の三原色を認識する視細胞によるものであるが、
似たようなことが嗅覚でも起こっているようなのである。
匂いの元となる分子は数万とも数十万ともいわれているが、これを
認識するのに、ある匂い分子に対しては受容体A,B,Cが対応し、別の
匂い分子に対しては受容体A,D,Eが対応する、といったことを行っている
のである。
このことで何が有利かというと、匂い分子は無茶苦茶多いのだから
それ全部に対応するレセプターは作るのは無茶である。
複数のレセプターを使うことにより、匂い分子の部分部分と反応させ、
その結果を脳内でまとめてこれが匂い分子だ、と認識させるのである。
さてさて、この嗅覚受容体だが、我々のかなり古い先祖である魚類の
頃から持っていることが明らかになっている。水溶性の匂い分子の認識
などに用いられていたようなのだ。
鮭が川のにおいを覚えていて川に帰るみたいな感じで。
で、陸上に我々の先祖が進出すると、今度は揮発性の匂い分子の認識に
用いられるようになった。
つまり大きく分けて二つのグループの嗅覚受容体があるといっていい。
嗅覚が発達した理由は危機回避のためなどであろう。
火山ガスのにおいや腐った食べ物の匂いが不快なのは、我々がそれを
回避する必要があるからである。
…ってぇことは加齢臭とかある種の香水が不快なのも回避する必要が
あるから?…ではない気もするけれども。
特に夜行性の哺乳類では発達した。
ネズミなどでは我々よりはるかに多い、約1000種類の嗅覚受容体遺伝子が
動作している模様なのだ。
犬やネコの嗅覚が我々より優れているのも、夜行性であったためであると
考えられている。
野良ネコなんか鼻づまりで下手すりゃ死ぬらしい。
ネコの肝臓ってあまり強くないらしく、嗅覚で食べるものをきっちり
認識している模様なのだ。
で、鼻づまりになるとそれができないから食べられないらしい。
逆に我々の嗅覚はどんどん退化している。
チンパンジーと比較してすら退化しているのだ。
そもそも霊長類(特に類人猿)になった時点で視覚重視になってるし、
さらに我々、他の生物が食えないようなものですら調理して食うし。
そういう意味では通常の人間の嗅覚はどんどん退化している。
もっとも我々の鼻、犬などに比べたら鼻の中のにおいを感知する
嗅上皮の面積が小さいせいもあって性能低いって側面もある。
…性能低いといったが例外もあるんだけどな。
化学やってる人とか嗅覚優れてる人結構いるし、私もそれなりに嗅覚
発達している。私の担当教官なんかはそれ以上だし、その10倍は鼻が
利く人もいるらしい。このくらいの人になるとにおいの方向とか、
人の匂いかぎ分けられるらしい。すげぇなおい。
麻薬捜査犬だけでなく麻薬捜査人(麻薬のにおいをかぎ分ける人)も
いるのだから、嗅覚に関しちゃ個人差はかなり大きいと思われる。
逆に鼻利かなくてもすぐ困るわけでもないしな。
味音痴とかにはなると思うけど。
アルツハイマーとかある種の脳の病気では嗅覚落ちるらしい。
脳内での嗅覚の処理機能が低下するためだろう。
1991年にBuckとAxelらがラットの嗅覚受容体を発見したのだが、人間では
なかなか見つけることが出来なかった。
そもそもこの二人、この発見でノーベル賞とってる。
それくらい厄介な代物なのである、嗅覚受容体というのは。
で、現在347種の嗅覚受容体が人間に存在するといわれている。しかし。
これ個人差がかなりあるとさっきも書いたが、下手したら個人個人で
発現している嗅覚受容体は違う可能性が高い。
なんせ偽遺伝子(遺伝子として使われていない遺伝コード)になってる
嗅覚受容体遺伝子は1000近く存在するのだ。
例えばフェロモン受容体遺伝子は人間の場合偽遺伝子化しているが、
ラットなどでは遺伝子として作動していることが明らかになっている。
…しかし、これ個人差あるとしたらひょっとしたらフェロモン受容体
持ってる人いる可能性すらあるな…
あとまぁ何度か書いたけど、HLA型と相性ってのは関係しそうだと。
我々の体表にも自己認識分子は発現していて、その分子が空気中を漂う。
我々のにおいが相性を決めるってことはしばしばありそうである。
遺伝子多様性の維持や、免疫系の適合性などについて関係している。
だから見た目だけで決めるのは、よろしくないのかもしれない。
見た目も大事ではあるけどさ。
我々の嗅覚は退化しているわけだけれども、将来的にはまた進化するかも
しれない。というのも我々新たな化学物質やら何やら作りすぎてて、
視覚だけでは対処しきれなくなっているからだ。
科学の進歩で嗅覚が進化するってどうなんだろうか?
ある意味動物的だなおい。
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